さとうしょうぞう
福山市生まれ。からくり時計で全国的に知られる時計職人。1975年(昭和50年)から天体写真の撮影を始め、1980年代には我が国の月面写真の第一人者になる。月面写真を自家プリントするために「佐藤処方」の現像液も開発。2001(平成13)年、月の写真を通じた天文学への貢献により、北海道の天文家によって発見された小惑星の名を「Shozosato」とすることが国際天文学連合から承認される。共著に「天体写真クリニック」(誠文堂)「図説月面ガイド」(立風書房)がある。NHKハイビジョン番組「ふるさとから」でも取り上げられた。アストロクラブ・ふくやま会長。ホームアドレス http://www.watchstore.jp/



低感度超微粒子のフィルムで撮影する。月は動きが遅いので、シヤッタースピードは1.3秒ほどだ。
自宅のすぐ裏に備えた天体望遠鏡で月の撮影を続ける。地球には大気があり、常に揺らいでいるため画像を安定させる事は難しい。夕なぎのあった夏の夜は大気が安定するため絶好の撮影タイミングだが、近年はクーラーを夜も使っている家庭が多いため、なかなか安定しないようになった。大気の澄んだ冬は星がチカチカと明滅して見えるので、撮影が難しい。慣れてくると望遠鏡をのぞかなくても、言い写真が撮れるかどうか判断できるようになる。

 

カメラ雑誌を見ていたら、月をとてもリアルに写した写真が載っていて驚いたのが天体写真を撮ろうと思ったきっかけです。早速、知人の天体望遠鏡で月をのぞいてみると、その美しさにカルチャーショックといいたいほどの衝撃を受けました。給料の半分近くも出して望遠鏡を買い、明くる日からすぐに撮影を始めました。当時、もう30歳を過ぎていましたから遅いスタートですね。天体写真は子供の頃からやっている人がほとんどですから。仕事場終わると望遠鏡に向かい、仮眠をとった後、今度は下弦の月を狙います。現像も自分でしますから、月がきれいに撮れる夏の間はほとんど寝る時間がありませんでしたね。月の撮影の場合、撮影50%、仕上げ50%と言われるほど暗室の技術が大切です。どうしても良い現像液が見つからないので、各成分を自分で分析して調合し、オリジナルの現像液を作りました。「佐藤処方」として商品化されています。そうした努力のかいあって、1980(昭和55)年ころから天文雑誌などのコンテストにどんどん入選するようになり、「よくこんな良い写真がたくさん撮れるものだ」と審査する先生方にあきれられるほどでした。
80年代を通して200ものコンテストに入選し、月の写真の第一人者と言ってもらえるようになったのです。彗星や恒星など、同時にいろんな天体写真を撮るのではなく、月1本に絞って集中的にやったので上達も早かったのでしょうね。月の魅力は、ぐっと拡大して見る事ができることです。土星や火星などの他の天体は、いくら拡大してもほんの一部分しか見えませんが。月だと直径2キロ程度のクレーターまで撮影することができるんです。月から地球まで36万キロも離れていますから、東京から名古屋にいる人が見分けられるくらいの拡大率なんです。私は月全体ではなく、クレーターのアップばかりを撮っていますが、月面は観測の時期によって上下左右へ少しずつずれる秤動運動があるため、まったく同じ風景は現れず、いくら見ても飽きることがないですよ。私の本業は時計作りです。時計は近くにある細かい部品が、天体写真は遠くにある月が対象ですが、拡大してみるという点では共通するところがあるかもしれませんね。

直径2キロまでのクレーターまで拡大して見られるのが魅力です。